少しの恐怖と、ときめきを

螺旋階段を駆け下りた

なにか黒い闇が迫ってきていて

逃げなければいけなかった

階段から、みんなは2人手を繋いで駆け下りて

そのまま飛び出す

大きな箱から溢れている

骸骨の山へ

 

誰とも手を繋いでいない自分は

1人で走っていた

でも何故か飛び出せはせず、

他に1人で来る人を待っていた

 

誰かが駆け下りてきて

4段ほど上で止まった

こちらに手を伸ばして

一緒に飛び込もう、と

 

階段を上がり、一緒に骸骨の山へ飛び込んだ

さっきまで生きていたはずなのに

みんなもう

腐敗が進んでいる

死ぬことを理解しながら

見知らずの人と

2人でそこへ飛び込んだ

知らずのうちに太ももを擦りむいた

その傷から身体が急速に腐敗していく

 

山積みの死体の中

誰かも分からないようになって

全に混ざって死んでいくのが嫌で

うつ伏せに飛び込んだ姿勢から

少し寝返りを打った

山から外れて仰向けになる

 

繋いだ手は離れなかった

 

このまま死ぬと分かった

いや

気がついた時には

もう死んでいて

意識だけが浮遊していた

 

身体から自由になった視点は

少し高度を上げて後ろを振り返った

今にあの闇に覆われそうな空は

紫と桃色に染まった

美しい夕焼けだった

なんだか急に心臓がきゅっとして

自分の身体へ戻った

 

視界が暗くなっていく

身体はもう動かせない

自分の重みを支える筋力が無くなって

胴が軋む音がした

痛みは無い

恐ろしくもなかった

 

死んでしまった、と改めて意識したのに

なにも恐ろしくなかった

もしかしたら恐ろしかったのだけれど

自分でも気が付かないように蓋をしていた

眠りゆく意識の中で

もう少しだけ起きていようと

これが最後の眠りになると感じながら

無理に意識を起こした

それはまだ生きていたいのではなく

紛れもなく

死ぬ時をみたい、という好奇心だった

不可知が覆るのだと、

ときめいていた